1.消費税改正まであと4ヶ月足らず・・・
ひところ消費税改正はまた先延ばしか?などという話題がよく聞かれました。
最近は下火になりましたが、過去これまでのことを考えると「先延ばしはあり得るかな」などと迷ってしまいます。
とはいえ、実務に携わる者としては準備をしておかねばなりません。
いやいや「うちはもう準備してるよ!」という方も多いことでしょう。
一方で「まだよくわからないなぁ・・・」という方が多いというのが私の印象です。
今回の改正は、税率が変わるだけでなく、軽減税率、インボイス方式の導入という大きなテーマがあり、なかなか複雑です。
しかし、みなさんがこの10月1日までに何から何まで全てをマスターする必要は無いでしょう。
なぜなら、それぞれの納税義務者にとって、関連する項目、しない項目、があるからです。
今回の改正が、自分にとってどのように関連するかを考えてみる必要があります。
自社(自分)が、売上を計上する場合、原価・経費を計上する場合、などを想定して税率はどうなるか、インボイス方式ではどのような準備が必要か、などを考えてみましょう。
複数税率になり、記載事項の定められた請求書(適格請求書=インボイス)の作成が必要になりますから、実務上、会計ソフトや業務ソフトに頼る部分が増えることになると思いますが、単にソフトやレジを導入すれば解決するといったことでもなさそうです。
どのように使用するか、設定するか、自動化するならどこまでできるか・・・
特にインボイス方式については、どこまで自動化できるかが大きな課題と私は考えます。
インボイス方式導入については令和5年10月1日の正式な導入までの間、移行期間のような手当がされています。
この5年間が大事な期間といえるかもしれません。
2.税率について
ご承知の通り10月1日から、10%(消費税7.8%・地方消費税2.2%)になります。
ただし、これまでの改正でもありましたが経過措置というものがあります。
たとえば、平成31年4月1日(指定日)以前、税率8%の時代に契約をしていた資産の貸付については、その契約期間中の取引に限り10月1日以降も旧税率8%が適用されます。
工事の請負等も契約日が平成31年4月1日(指定日)以前であれば、完成引渡日が10月1日以降であっても8%が適用されます。
つまり、この時期は一つの事業年度で税率が複数になります。
(国税庁:消費税率等に関する経過措置)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/kaisei/pdf/01.pdf
3.軽減税率について
軽減税率は、飲食料品と定期購読契約の新聞についてのみ適用される制度です。
特に、飲食料品をどう処理するのかが悩ましいところです。
飲食設備のある場所等での食事等の提供は軽減税率の対象とはなりません。
国税庁のサイトには下記のようなQ&Aを掲載しています。
このQ&Aは、かなり細かく事例を想定して作られています。
例えば・・・
- コンビニの場合、イートインコーナーは飲食設備であり、これを利用するのか、持ち帰るか、をお客さんへ意思確認が必要
- スーパーマーケット休憩スペースの場合、その場所が飲食に使われる場所であれば飲食設備に該当し、お客さんの意思確認が必要
- ファーストフードのテイクアウトの場合、お客さんの意思確認と使われるテイクアウト用の容器を利用すれば、軽減税率適用可
- 移動販売車などで、お店が用意したものでない公園のベンチ等(ベンチの所有者と利用の合意もない)でお客さんが飲食した場合は軽減税率の対象
といった具合でその他、詳細に事例が想定されています。
当面はこれを参考すべきでしょう。
(国税庁:軽減税率制度に関するQ&A 個別事例編)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/03-01.pdf
4.インボイス方式
これまで、日本では消費税の申告にあたって、取引の相手方が課税事業者であるかどうか、消費税をどのように認識しているかなどを確認せずに処理してきました。
つまり支払先からの領収書だけから、この内容ならば消費税は課税、非課税、免税、対象外、税率は何%という判断をし、相手方が課税事業者であるかどうか、その認識や処理などを確認する必要はありませんでした。
これを今後は、消費税を含む記載事項の定められた請求書(適格請求書=インボイス)をもとに処理をする事にしようという制度です。
したがって原価・経費の支払いをした場合、この取引の相手方が発行する請求書(適格請求書=インボイス)をもとにして処理がされていなければ、仕入控除ができません。
適格請求書=インボイスを発行するためには、「適格請求書発行事業者」として登録をする必要があります(令和3年10月1日以降)。
スケジュールとしては、正式な導入は令和5年10月1日ですが、それ以前5年間に移行期間のような手当がされています。
税率の区分や記載事項やの多い適格請求書=インボイスへの移行前5年間だけ、簡便な方法を認め負担を軽減しようというものです。
内容が多いので詳細は次の機会に譲りますが、国税庁の下記のリーフレットの5ページから9ページが参考になりますので記載しておきます。
(国税庁:よくわかる消費税軽減税率制度)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu//pdf/04.pdf
正式導入後のインボイス制度については国税庁の下記のリーフレットが参考になります。
(国税庁:適格請求書等保存方式が導入されます)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/300416.pdf
5.準備を急ごう
こうやってポイントだけでもまとめてみても、大きな改正だということがわかります。
国税庁のホームページを見るとかなり力を入れて周知しようとしてるのがわかります。
これまでの消費税の改正とはぜんぜん違います。
皆さん、準備はいかがでしょう。
- 軽減税率の税率区分などは国税庁のQ&Aにあるように実際できるのかな?
- インボイスは消費税という税制から考えれば当然導入すべきだと思いますが、うまくいく導入できるかな?
と心配になります。
インボイスは「正式には5年後、移行期間がある、それまで簡便な処理が認められる」と書きましたが、そうはいっても10月1日から始まる、とかんがえてかからなければならないでしょう。
いずれにしても準備を急ぎましょう。